【渡辺の本棚】 「ユニ・チャーム SAPS経営の原点」

2011.02.04
    

今日ご紹介させて頂きますのは、ユニ・チャーム ペットケア社長の二神軍平さんによって書かれた 『ユニ・チャーム SAPS経営の原点』(ダイヤモンド社) であります。
この 「SAPSマネジメントモデル」 というものは、ユニ・チャームの創業者である高原慶一朗氏の哲学を経営モデル化したもので、それを詳しく解説し、SAPS経営のエッセンスのようなものを伝えてくれているのが本書です。
 
ちなみに、「SAPS」 の四文字は、以下に記した意味であります。
 
 「S」 : Schedule (スケジュール)
      「思考」と「行動」のスケジュールを立てること
 「A」 : Action (アクション)
      計画どおりに実行すること
 「P」 : Performance (パフォーマンス)
      効果を測定し、反省点・改善点を抽出すること
 「S」 : Schedule (スケジュール)
      今週の反省を活かして次週の計画を立てること
 
この 「SAPS経営」 の土台ともなっているのが、 『人間尊重』・『達成感重視』・『時間競争力の強化』 といった考え方です。
 
組織とは、ある目標を達成するために複数の人間が協力するシステムだといえます。その協力システムが組織を構成する全ての人にとって価値あるものとなり、なおかつ、その協力システムのもとで価値あるものを創出し続けるには 「互いを思いやる心」 が最も重要。相手を思いやる気持ちから発生するコミュニケーションの連鎖を組織の能力に転換していくことで、会社も個人も成長していこうというのが、『人間尊重』 の考え方です。
 
次に 『達成感重視』 の考え方とは、こんな考え方です。
例えば、野球チームのメンバー全員に “三割バッター” になることを強制するのは不可能でも、一日に “100回の素振り” を強制するのは可能で、そうした 「行動の強制」 こそが組織の運動能力を向上させる最良の方法であり、これはまた、メンバー一人ひとりが “達成感” を得る上でも効果的だということ。
つまり、「結果」 を強制するのではなく、「行動」 を強制することで、各自が持つ資質や、その時点での能力に関係なく誰もが “達成感” を味わうことができるんだ という考え方です。
 
そして、『時間競争力』。 これについては言うまでもありません。
競合他社よりも迅速に、顧客に価値を届けることができる企業が、業界他社よりも速い成長を達成し、収益性を確保できるという観点から 「時間競争力を強化」する必要があるのです。
 
この本の中には、「SAPS経営」 を導入するにあたっての様々な手法ならびにツールが紹介されてもいるわけですが、これを自社に導入するかどうかは別として、参考となるような考え方が多く記されていました。
 
中でも印象に残ったのが、これ。
皆さんは 『2・6・2の法則』 についてはご存知でしょうか・・・?
組織というものは、2割の優秀社員がいて、中間層が6割、そして残りの2割がお荷物社員という構成になっていて、組織の売上の8割をたたき出しているのがトップ2割の社員だというもの。
 
経営者の中には、「ローレベル2割の社員の入れ替えを常に意識して経営しろ」、つまり 「ローレベル2割は辞めさせろ」 という考えを持っている人も多く存在します。
しかし、「SAPS経営」では、ローレベルの2割の人を大切にして、彼らの力を引き上げることで組織全体の力を向上させようとしています。
 
本書では、ゴルフに例えて、こんなふうに記されています。
「トップレベルの人のナイスショットだけに頼っていると、まさかのミスショットで組織は大打撃を被りますが、このマネジメントスタイル(SAPS経営)では、万が一のミスショットがあっても、誰かのナイスショットがきちんとカバーするようになっている。 だからこそ、全員で “達成感” を分かち合えるのです。」
 
この考え方には、大いに共感を覚える私です。 当社もそんな会社でありたいと思います。
そのためには、私自身が指導技術を磨いていくと同時に、もっと、もっと、心を高めていかねばなりません・・・。