【渡辺の本棚】 「野村の監督ミーティング」

2010.11.23
    

今回ご紹介させて頂きますのは、『野村の監督ミーティング』(日文新書)。
これは、プロ野球 「東北楽天ゴールデンイーグルス」 の前ヘッドコーチ、橋上秀樹氏によって書かれた本です。
橋上氏は、ヤクルト・阪神・楽天の3球団で、現役選手として、またコーチとして、延べ12年に亘り野村監督の薫陶を受けた人物。いわば、野村監督の “愛弟子” ・”側近中の側近” とも言える人物であります。(ちなみに、橋上氏は我が 「日本ハムファイターズ」 にも選手として在籍していたこともあります・・・)
本書では、側近だからこそ知っている “知将” 野村克也監督の真実を余すところなく語ってくれています。
 
野村監督といえば、当時弱小球団だった 「ヤクルトスワローズ」 をリーグ優勝4回、日本シリーズ制覇3回という強豪チームに育て上げた名伯楽。
昨年は、弱小 「楽天イーグルス」 をリーグ2位にまで押し上げました。
皆さんは、そんな “野村監督” にどんなイメージをお持ちでしょうか・・・?
 
真っ先に思い浮かぶのは、あの “ボヤキ” かも知れませんが、私などは 「データに基づいたきめ細かい戦術」 や 「論理的な技術論」 といったものをイメージします。
 
そんな野村監督が選手指導において最も重きを置いていたものは何か・・・・
ズバリ、それは 「人生観」 や 「仕事観」 といったものだったようです。
強い組織を作り、また、個々の選手が能力を伸ばしていくためには、「人としてどう生きるべきか」 、また、 「人生とはいなかるものか」 といった人生観や人間教育が一番大切だと考えておられるということが、この本を通じてよく理解できました。
 
野村監督は、シーズン中は当然のこと、当日の対戦相手や試合結果を分析するためのミーティングを常に行なっておられたようですが、それとは別に、「人生観」や「人間学」、「組織論」を含めた野村監督の野球学を学ぶミーティングも行なっておられました。
これは、シーズン開幕前の「春季キャンプ」中にジックリ腰を据えて行なわれ、これを選手やコーチは ”監督ミーティング” と呼んでいたのだそうです。
 
ヤクルトの監督に就任した年の「春季キャンプ」では、「いったい、いつ野球の話をするんだろう?」と思っているうちにキャンプが終わってしまったとのこと。
これは、それだけ 「人生観」 や 「仕事観」 を大切にしていたということであります。
これらを毎年毎年、同じ内容で選手やコーチに対し、繰り返し繰り返し、懇々と説いていったのだそうです。
この点については、私も大いに共感を覚えるところでもあり、当社が 『フィロソフィー』 を 会社運営の中枢に置いていることが間違っていないこと、毎朝行なっている 「フィロソフィー手帳の輪読」 の有効性について確信を深めた次第であります。
 
さて、そんな “監督ミーティング” の中で、野村監督が最も伝えたかったことは何か・・・・、
それは 「変化をすることの重要性」 だったと橋上氏は書いています。
目の前の現実を好転させるためには自分が変わるしかない。「最大の障害は、自分自身の中にある」 ということを伝えたかったようであります。
長年にわたり野球界を見てきて、「変わらずに失敗した人間は沢山いたが、変えて失敗した人間はほとんどいない」 という現実を知っているからこそ、そこを協調しておられたようであります。
 
これは、野球以外の世界、私たちの “仕事” にだって大いに当てはまる真理ですよね・・・。
これまで持っていた自分の考え方や、やってきたことを捨てることは、とても勇気がいるし、不安も感じたりします。 新しく変えてみて、裏にはまったらどうしよう・・・ と思ったりもします。
でも、変わっていかなきゃならないのです。
 
私も、「変わることの重要性」 を常に念頭におきながら毎日を送っていきたいと思っています。
「進歩は変わること。変わることが進歩である」
これは、野村監督が再三再四語られた言葉で、橋上氏の脳裏にも強く焼きついている言葉でもあるようです。