【渡辺の本棚】 リストラなしの「年輪経営」

2011.01.06
    

今年最初にご紹介させて頂きますのは、『リストラなしの年輪経営』(光文社)。12月に読んだ本です。
著者は、”かんてんぱぱ” のブランドでも知られる 「伊那食品工業株式会社」 の創業者で、代表取締役会長の塚越寛さんです。
伊那食品工業は、創業以来48年間の増収増益という脅威の実績を持つ長野県にある企業で、未上場のこの会社には、毎年名だたる大企業の経営幹部たちが続々と訪れています。
そんな 「伊那食品工業」 の経営戦略をつまびらかに示してくれているのが本書であります。
 
まず、『年輪経営』 とはどんな経営のことを言うのか・・・?
それは、会社の原点を見つめ、”遠きをはかる”経営。 目先のことではなく、何年か先を見て仕事をしていくことを言います。
もちろん、会社ですから 「山あり谷あり」 です。 しかし、良いときも悪いときも無理せず、”低成長” を志し、自然体の経営をするのです。
塚越氏は、会社にとって”急成長は敵” 、厳に慎むべきで、木の年輪のように少しずつでいいので、前年より確実に成長していくことが理想であると述べておられます。
つまり、会社の成長と社員の成長とが連動した “末広がりの永続的な安定成長” こそ、経営者が目指すべきものであると説いておられます。 これこそが、社員を幸せにすることに繫がっているのです。 充分に 「上場」 できる規模の会社でありながら、あえてそれをしないのも、「上場」 が社員を幸せにすることに繋がらない、むしろ、逆だと考えているからなのです。
 
塚越氏は、会社が成長するということは、社員が「前より幸せになった」と実感できることだと述べておられますが、私にはこのフレーズが特に印象に残りました。
売上を増やすのも、利益を上げるのも、社員を幸せにする手段に過ぎないわけです。
この点を、改めて認識しておかねばなりません。
 
会社経営をいていく上で(社員の気持ちを一つにしていく上で)、参考になるようなことが盛り沢山の一冊。 「経営者」の方は、是非読んでみてください。
 

「不況に左右されない中小・中堅企業経営の原点」 とも言われるのが、この『年輪経営』。
 
興味をお持ちになられた方は、同じく塚越氏によって書かれた 「いい会社をつくりましょう」(文屋) という本も一緒に読んでみられることをお奨め致します。