賃貸更新料は有効!(最高裁判決)

2011.07.22
    

昨日は、(財)日本賃貸住宅管理協会(通称:日管協)の「臨時理事会」および「運営協議会」に出席するため東京へ出張しました。
「臨時理事会」については、審議事項が1つしかありませんでしたので瞬く間に終了し、そのまま「運営協議会」へと移りました。
今日は、この会議の中でも報告された 『賃貸更新料有効判決』 について記させて頂きます。

7月15日、最高裁が歴史的な判決を下しました。
元借主が支払い済み更新料の返還を求めていた訴訟で、”更新料は有効” と認めたのです。
昨日の会議で、私の隣に着座されていたのが、この裁判の当事者となっていた「更新料問題を考える会」の長田修代表(株式会社長栄・代表取締役)。
会議開始前に、多くの理事から4年超に亘る裁判の労をねぎらう声があがっていました。
 
当日は、3件の上告審判決が下されたわけですが、その内の一つ、「平成21年(受)2078号」についての『判決要旨』を、昨日の会議内において日管協の顧問弁護士である「ことぶき法律事務所」の亀井先生から解説をして頂きましたので、以下にそれを記させて頂きます。
 
(1)更新料条項の性質、消費者契約への該当性

更新料の性質は、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。

(2)更新料条項が消費者契約法第10条の適用により無効となるか。 

①更新料条項は、一般的には、任意規定の適用の場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重するものに当たるから消費者契約法10条の適用がある。 

②当該条項が信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものであるか否かは、消費者契約法の趣旨、目的に照らし、当該条項の性質、契約が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべきである。

③更新料が(1)の性質を有していることに鑑みると、更新料支払におよそ経済的合理性がないということはできない。 

④一定の地域において更新料の支払をする例が少なからず存すること公知の事実である。 

⑤従前の裁判上の和解手続等において、更新料条項を公序良俗で無効とした取り扱いがなされていないことは裁判所に顕著な事実である。 

⑥更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃貸借当事者間に更新料支払いの明確な合意が成立している場合には、賃借人と賃貸人間との間で、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過しがたいほどの格差が存するとみることもできない。 

⑦よって、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情が無い限り、消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。

(3)本件への適用

本件では、更新料は、賃料の2か月分余り、更新期間1年間とするもので、「特段の事情」が存するとは言えず、消費者契約法10条により無効とすることはできない。

 
 
如何でしょう・・・。 大体ご理解いただけましたでしょうか?
とにかく「消費者契約法10条」を持ち出せば、何でも通ってしまうという風潮には一定の歯止めがかかったのではないかと思える判決であります。
行き過ぎた消費者保護は如何なものか・・・、”契約自由の原則”はどうなるのか・・・、ということです。
 
ちなみに、当地(東海地方)においては「更新料」を収受する風習がありませんので、当社の管理物件についても「更新料」は頂いておりません。
逆に、私には東京の大学に通う娘がおり、賃貸マンションを借りて生活をしているわけですが、この物件については1年間毎に15万円の「更新料」を支払っている立場にあります。
ですから、業者側からの一方的な見方をしているわけでは決してありません。(念のため・・・)
娘のマンションを借りるにあたっても、”1年毎に15万円の更新料”が必要だと言う旨は、事前に説明も受け、それを了承したから契約を結んだわけです。
それを、後になってから無効だと主張するのは筋違い、それじゃ”ヤクザ”と一緒だと思います。
 
この判決が下された翌日にツイッター上にも記させて頂きましたが、私個人的には至極当然の判決が下されたと思っています。
 
※写真は、7月18日付の「全国賃貸住宅新聞」。この件が、一面となっています。