両極端を併せ持つのが経営者

2021.05.31
    


当社のフィロソフィ手帳《ウィズコ・フィロソフィー》P.49には【大胆にして細心であれ】というタイトルで以下のように記しています。


人間には、大きく分けて、緻密で繊細で几帳面な内気な人と、豪快で大胆で外交的な人の二つのタイプがあります。仕事を遂行していく上では、この両面を併せ持つことが必要となってきます。

時代劇を見ていると、だらしない外見で、そのうえ酔っぱらっていながら、背後から忍び寄る敵の気配に気づいて、肩越しにバッサリと斬る剣豪がいます。そんなシーンに私たちは喝采を送り、一見豪快に見える主人公の中に、一分のすきも無い繊細な神経を見いだすのです。

ただ単に大胆なだけでは、完璧な仕事はできません。一方、繊細なだけでは、新しいことに挑戦する勇気は生まれません。仕事においては、「豪快さ」と「緻密さ」という二律背反するような性格を備え、局面によって使い分けられる人物を必要とします。

繊細でシャープな神経の持ち主が、場数を踏むことによって、真の勇気を身につけていったときにはじめて、本物になるのです。

このように生まれついている人はあまりいません。しかし、どちらかの性格を備えた人が、意識して努力すれば、より高いレベルでバランスのとれた人間になれるのです。



これは、盛和塾在籍時に稲盛和夫塾長(京セラ名誉会長)からご指導いただいた内容を、塾長の言葉を極力取り入れつつ、当社のスタッフ誰もが対象となるような感じで纏めあげたものですが、盛和塾は基本的に「経営者」に対する塾でしたので、稲盛塾長は我々経営者に対してはもう少し厳しい表現で「あるべき姿」を説かれました。

事業を行なっていく中においては、常に決断を迫られるわけですが、その決断を下す際の姿勢・心構えです。


あるときは、幹部社員から従業員、銀行まで一斉に反対される中で、なお、自分の信念に基づいて、断固として計画の実行に邁進しなければならないときもある。

一方で、あるときは、一従業員の言葉に謙虚に耳を傾け、自分の計画を勇気をもって取り下げる必要もある。


つまり、決断を迫られる経営者には、「慎重さ」「大胆さ」両方必要だということです。

これは、慎重でも大胆でもない中庸な性格であるべきだという意味では決してありません。


従業員に対する接し方について言えば、あるときは、仏のごとき人情味あふれる態度を示し、あるときは “泣いて馬しょくを斬る” ごとく冷酷なまでも厳しく接する、、、 そんな姿勢が経営者には絶対に必要であると説かれました。


経営者には重い責任があります。

お客様のお役に立ち、地域社会に貢献することは勿論のこと、当社で働いてくれる社員の「物心両面での幸せ」を追求せねばなりません。

そのためには絶対に会社を潰してはならないのです。

会社を永続させることこそ経営者の最大責務だと言っても間違いないでしょう。

そんな観点からすれば、両極端を併せ持つ人物でなければこの職責は全うできません。

私は今後も強い気持ちを抱いて経営に臨んでいく所存であります。



一流の知性とは、二つの相対立する考えを同時に心に描きながら、しかも正常に機能し続けられる能力である。〔F・S・フィッツジェラルド/アメリカの作家〕