三為契約とは?三為契約のメリットとリスクを説明します

2024.04.28
    

第三者のためにする契約、略して「三為(さんため)契約」。それって合法でしょうか?それとも違法?

第三者のための契約(三為契約)は、AとBの間で売買契約が行われる際、第三者であるCに直接権利を取得させる契約(第三者のための契約)のことです。Aが売主、Bが不動産業者(三為業者)Cが買主として、具体的にはA・B間とB・C間で以下のような契約を行います。

①A・B間で「Bは代金完済までに所有先を指定し、AはBが指定する人に直接権利を取得させる」内容の特約付きで売買契約をする。

②特約に従ってBがCを所有権の移転先に指定する。

③CがAに対して受益の意思表示を行う。

④BがAに対して売買代金を全額支払った後に所有権がAからCに直接移転される。

宅地建物取引業者は原則として「他人物売買契約」は禁止されていますが、この三為契約は例外的に締結できます。

 また、登記では法律上、AからB、BからCに移転した場合は同じように移転を明示しなければならず、中間省略登記(所有権をAからB、BからCに移転する際、登記についてはBを飛ばしてAからCに移転する)は禁止されています。

 しかし、不動産業界では実務上は高いニーズがあり、合法的に中間省略登記と同じ効果をもたらす方法として考えられたのが「第三者のための契約(三為契約)」です。

 三為契約ではBさんはAさんから所有権を買うわけではありません。先述の①~④を登記原因証明情報に記載する事により、AからCへ所有権移転登記が可能になるわけです。

 このように行われる中間省略登記を「新中間省略登記」と呼び、法律でも認められた契約行為となります。

れっきとした法律行為…それなのに三為契約業者の印象が悪い理由は何かあるの?

三為契約は法律上の問題はなくとも、トラブルに発展するケースが多いのも特徴です。三為業者は物件の買主を見つければ自社で決済する必要がありません。売主から買主へそのまま登記を移転できるので、買主の決済金を仕入れ先の売主へそのまま支払えばよく大きなリスクを取らずに儲けるというビジネスモデルも敬遠される理由でしょう。

 また、三為契約ではA・B間、B・C間で別契約を交わす為、売主であるAは最終売買代金が分かりません。

三為業者は購入した価格に上乗せして買主へ販売している(2~3割程度)ので、買主Cからすれば、相場よりも高額な価格で購入することも大きな要因です。

三為業者を利用する事のメリットはある?

一般的には評判が良くない三為業者ですが、利用することで得られるメリットもあります。

①提携金融機関で物件が融資付けされている。 

 三為業者で既に鑑定が完了しているため、提携金融機関で融資を受けやすい。

②契約不適合責任を追及することができる。

 売主が不動産業者であるため、万が一購入した物件に瑕疵があったとしても購入から2年以内は三為業者に契約不適合責任を請求することができます。

③フルローンやオーバーローンを利用できることがある。

 三為業者との売買では、価格を三為業者が決めています。 そのため物件の取引に関する全額(登記費用などの諸費用)を価格に含めることでフルローンやオーバーローン が利用できる場合があります。自己資金が少ない方が不 動産投資がしやすいことがメリットです。

 逆に以下のようなデメリットもあります。

①売主は安く売り、買主は高値で買うことになる。

 買取と同様に三為業者も安く仕入をし、高く売ることで、 差額を利益にできます。そのため、売主も買主も金額面ではデメリットとなります。

②売却額が買主に開示されない。

 三為契約は売主と買主との間で別々の契約をすることに なるため、売主、買主は双方の売買価格を知ることは出来ません。①であったように三為業者は利益を上乗せした差額が利益となります。そのため、相場を知らないと高い価格で購入するリスクが発生します。

それでは、三為業者自身のメリットデメリットはどうなのでしょうか?第一のメリットは税負担がなくなることです。

 買取の場合、登記が発生するので登録免許税が買取と再販時にかかりますが、三為の場合は業者は登記しないので、税負担がありません。また、不動産取得税も自身が購入しているわけではないので、課税されません。

 そのため、利益を多くすることが出来るのが一番のメリットとなります。

 逆に三為業者にもデメリットはあります。先に買主が決まっている場合は良いですが、売主との契約後に買主を探す場合や購入予定者が契約前にキャンセルした場合、引渡し時期までに買主が見つからないと違約金を売主に払って契約を解除するか、自らが買取をすることになります。

 また三為契約の場合、売主は個人、三為業者は不動産業者になるため、契約不適合責任を免責にすることも多いですが、買主には三為業者は不動産業者として2年間責任を負うことになります。そのため、2年間は地中から埋設物が出てくるなど起こり得るため、安心できないわけです。

 このように、各々メリット・デメリットがあるわけです。

三為契約が全て悪いということではなく、正しい知識をもった上で、取引する業者を見極めることが重要です。